No.007
「高円寺で家を探す」。好きな街で見つけたリノベーション住まいで始まるレトロでDIYな暮らし。
東京都杉並区高円寺北/1995年築/RC造マンション/73.21㎡/2LDK+WIC+WTC
▲ 高円寺にある銭湯の一つ「小杉湯」。深夜遅くまでやっている高円寺住民にとってありがたい場所。80年以上の歴史を持つ老舗の銭湯のため、外観・内観ともに雰囲気があり、根強いファンも多い。
下丸子、西荻窪、三軒茶屋。辿り着いた高円寺という街
Cue:はじめに、住まい探しをしようと思ったきっかけからお聞かせいただきたいと思うのですが、これまでに高円寺にはながく住んでいたのですか?
A様:いえ、高円寺は直近の6年くらいですね。賃貸の更新時期が近づいて、自分自身も30代半ばを迎えて、ローン返済などの先行きを考えると、「そろそろマンションを買うタイミングだな」と思いはじめたのがきっかけです。それ以前は会社の寮があった下丸子や西荻窪、三軒茶屋のシェアハウス暮らしなどけっこういろいろ住んだんですよ。でもやはり高円寺は昔から大好きでしたから、何かとよく通っていたんです。高円寺って魅力的な銭湯がけっこうあるんですよ。休日は行きつけの銭湯でのんびり浸かったり、いろんな銭湯めぐりをしたり、そういう感じです。
Cue:私も杉並区住まいなのでときどき行っています。レトロな雰囲気があって「知る人ぞ知る」っていうあの感じが、なんとなく高円寺っぽくていいですよね。
A様:はい。お店や人柄や、街の全てが好きなんですよね。カメラと旅行が趣味なので、東京はもちろん、全国各地の歴史ある街や、海や空がきれいなビーチや自然豊かな場所をまわったりしています。
▲ カメラと旅行が趣味というA様。年数回沖縄の離島に行き、PLフィルター付レンズで風景をスナップするのが好きだと言う。
Cue:阿佐ヶ谷や西荻窪など、近隣の街もまた魅力的なんですよね。高円寺以外のエリアでは考えなかったのですか?
A様:初めての家探しながら、「そう簡単には見つからないだろうな」とは思っていました。案の定、その通りになって。高円寺から、それこそ阿佐ヶ谷、西荻窪など範囲をもう少し広げて探してみたんですが、結局条件に見合ったマンションは見つからなかったんです。その頃からリノベーションという言葉を耳にし始めていましたが、しばらく新築~既存の中古マンションを探していました。
Cue:そこからどういう風に中古物件購入+リノベーションが「現実味」を帯びていったのでしょうか?
A様:まずちょうど空いているマンションの数そのものが少ないので、自分が気に入りそうな物件がほとんどないことに気づきました。予算や広さが合っても、今度は内装が良くないとか。そういう苦労続きのある時から、「リノベーションっていう手もありますよ」という以前聞いた話を真剣に考えるようになっていて。情報を集めていくうち、これなら可能性があるんじゃないかと希望が湧きました。そこから築年数や内装に、わりと余裕を持って探すことができるようになりました。
Cue:なるほど。それで、このお部屋がすぐに見つかったのですか?
A様:いやそう上手くもいかなくて(笑)。リノベーションを視野に入れてからは、ワンストップリノベーションを取り扱っている会社さんや、リノベ用マンションを中心に探してもらえる不動産屋さんにお願いして探してもらうことにしました。どうせやるならフルスケルトンでやろうと思っていたので、できるだけリノベ済みマンションは避けて探してもらっていたんです。というか、その頃になるとどうしても高円寺に住みたいと思うようになっていて。本気で探すうちに、どうしても譲れない優先順位が明確になったというか。
▲ 高円寺の古書市の様子。街を少し歩くだけでレトロな文化に触れ合うことができるのも魅力。
Cue:新築をあきらめ、エリアもあきらめる。それは幾らなんでも・・・と釈然としない気持ちだったのでしょうか?
A様:はい。一人暮らしなので、もともと縛りも少ないわけですし。だからもうそこは、原点回帰というか。でもやはり新築や築浅物件を探している頃と同じで、結果は芳しくないものでした。それに、リノベーション会社さんだと、中には設計料がかかるところがあるんですね。その予算はなかったし、私としてはそれがいま一歩踏み込めない懸念材料でした。そうこうしているうちに住んでいる賃貸マンションの更新の時期が迫ってきていて。フルリノベーションした場合の工期を逆算すると、もう後2年賃貸で住むしかないのかなと半ば諦めかけていたんです。
Cue:そこでこの物件と巡り合えたわけですね。
A様:そうなんです。もう本当にぎりぎりのところでした。これまでの経験から「このクラスの中古物件は他にはそうそう出ないな」という予想もすぐに立ちました。しかも内見した際に、なかなか好い印象を抱くことができたんです。
高円寺に似合うレトロなデザイン。いつでもDIYできるリノベ部屋へ
Cue:購入を決め、そこからさらにリノベーションを加えていくわけですが、どういう思いだったのですか?
A様:物件は、既に一度リノベされた物件で、これまで見てきた中でも特に好い印象の物件でした。ですが、自分が思い描いていた空間デザインのイメージとは違っていました。
Cue:以前はどんな印象のお部屋だったのですか?
A様:以前はもっとモダンな感じというか。ナチュラルな感じはありませんでした。床はカーペットのフローリングでしたし。
Cue:それに対し、A様の空間デザインのイメージは具体的にどんなものだったのでしょうか?
A様:最初にもお話しましたが、高円寺が好きなので、この街に似合うレトロなデザインをイメージしていました。それこそ高円寺にあるショップや銭湯のように、木を多く使って、その経年を楽しめるような住まいが理想だったんです。とはいえ、もうその頃になると、フルリノベをする工期は残っていません。ただ不動産購入費用を差し引いても予算がまだ少し余っていたので、だったらその分でとにかくできるところまでやって、少しでも理想の空間に近づけてみようというのがその頃の考えでした。
Cue:そして転居までに間に合わない部分は、「住みながら自分でやる!」と決めたわけですね。
A様:そうです。DIYなんかほとんどやったことないのに(笑)。
Cue:そのバイタリティというかチャレンジ精神はすごいです(笑)。でもそのおかげで、絶対に譲れなかった高円寺に自分の住まいを持つことができたわけですね。
A様:そうです。もう少し考えていたら、他の人に買われてしまっていたかも知れませんし。今考えても、良い決断だったと思っています。今では休日のDIYが大事なライフワークになっています。
▲ 木の素材感に溢れるLDK。室内窓のおかげでLDKとベッドルームにつながりが生まれている。Cue:予算と時間とがまず条件としてあって。そのほか、ここにはこの素材を使ってとか、具体的な部分も最初からあったのですか?
A様:いえ、ざっくりとしたイメージしかありませんでした。それをCuestudioの担当者さんに最初の打合せで全部伝えたら、その場でラフ絵を描いてくださって。こちらが全然まとまっていないまま話しているのにも関わらず、根気よく「これとこれ、どちらが近いですか?」という風にひとつひとつ分かりやすく噛み砕いてくれて。「そうそう、これです!」という気持ちで、あの時はテンションが上がりましたね。
Cue:室内窓やドア、棚板、リビング一部壁に用いた無垢材など、「木の温もり」が格段に増えました。これは全てDIYをするための、いわば「キャンバスづくり」ということでしょうか?
A様:はい。やすりやオイル塗装など、エイジング加工は住みながら自分でやっていけるように、全て手を入れることを考えて素材を選んでもらいました。
Cue:その他にこだわった部分はありますか?
A様:サニタリーですかね。洗面シンク周りの壁には、もともとはタイル貼りしてあったんですが、別のタイルに張り替えることにしたんです。ここも実際に自分がよく通う銭湯の古いタイルをイメージしていて、それに合うタイルがないか自分でいろいろ調べたんです。そうしたら、偶然気に入ったタイルが見つかったので、担当の方に張り替えができるか相談に乗ってもらいました。そして、先ほどの工期の話もあったので、タイルをはずして下地だけ残してもらい、住み始めて自分で取り付けることにしたんです。
Cue:小粒な感じと色合いとが、レトロでかわいいですね。
A様:刷新したドアのステンドグラスやすりガラスとよく合っていて、気に入っている箇所のひとつです。
<BEFORE>
<AFTER>
アドバイスを受けながらDIYしていく暮らし
Cue:転居して現在2ヶ月くらいですが、DIYの進行はどのくらいでしょうか?
A様:まず取り掛かったのは床ですね。以前の居室はカーペットの床だったのですが、全て無垢フローリングに変えてもらいました。その部分はオイル塗装し終わったところです。
Cue:全部ご自身で! ムラもなく初めてとは思えないほどクオリティ高いですね。時間がかかりそうです・・・。
A様:ええ。全部手でやすりがけして、それから塗装して、ものすごく大変でした(笑)。でも表現したい感じが出せたので、とても気に入っています。木の壁の部分も、そのうちやりたいと思っています。
▲ 塗装を施し終えた床と未着手の壁。同じ素材を用いているが風合いが違うのが分かる。
Cue:何でも、入居後は弊社の施工担当からDIYの簡単なアドバイスを受けてから行っているとか?
A様:そうなんです。塗装などを行う前に一度、手順や注意点を聞いてから始めています。玄関ウォークインクローゼットの棚を塗装した際はまさにアドバイスをもらいながらやりましたね。
▲ 「つい先日もしていた」というDIY塗装一式。モルタル玄関に置いてあるだけで様になっている。
「“探す”より“つくれる”というところはリノベーションの最大の魅力じゃないでしょうか。」
Cue:今回Cuestudioで中古物件購入+リノベーションを行ったわけですが、実際に暮らしの変化はありますか?
A様:まずながかった賃貸暮らしが終わったことの気持ちの変化はありますね。自分の家だから、いつでも好きにカスタマイズできるところは大きいです。DIYがすっかり日常的になって、ライフスタイルも変化しています。今目指しているのは「ずっとひきこもっていたくなるような家づくり」。まあこういう性格だから外にも出るんですけど(笑)。
Cue:アクティブなA様には嬉しい悩みですね。
A様:はい。あとは昨日も友人が遊びにきて「この家は居心地がいいね」と言ってくれたりと、頻繁に人が訪れるようになったことも変化ですね。やはりくつろげる自分だけの空間があるというのはぜんぜん違います。
Cue:ご覧いただいている読者の皆様や、これからリノベをしよう思っている方へ、リノベの魅力やアドバイスをいただけますか?
A様:そうですね。「探す」より「つくれる」というところはリノベーションの最大の魅力じゃないでしょうか。当初の私のように「○○のエリア限定で探したい!」と新築・築浅を探し続けているだけでは、きっとこの物件は手に入らなかったでしょうから。それと、当たり前ですけど、リノベーションする前と後で、がらっと変わった部屋を見るのは、やはり他にはない驚きが味わえますね。そこにDIYで自分でつけ加えていける喜びというのもリノベーション住宅ならではだと思います。
Cue:たしかに新築マンションを、住んだその翌日からガシガシDIYする人って中々いないかも知れません。
A様:リノベ物件だから、好い意味で気兼ねなく行えるというのはありますね。そういう親密さも、リノベーションの魅力のひとつなのかな。私のようなリノベ初心者・DIY初心者でも、2ヶ月でここまでできるようになっているので。アドバイスに関しては、いろいろな条件がある中で家探しをされている方がほとんどだと思いますが、上手くいけばリノベーションはかなり可能性を広げてくれるので、柔軟に探していくのがポイントだと思います。
Cue:ありがとうございます。それでは最後に、今後の展望をお聞きして終わりにしたいと思います。
A様:しばらくはここに住みますが、いつか住み替えはするつもりです。結婚や子育てとなれば、ここでは少し手狭なので。そのときこそフルリノベをやってみたいですね。家族次第で、一戸建てという可能性ももちろんありますが。
Cue:Cuestudioは戸建ての新築住宅もやっているので、そのときは土地探し・マンション探しからお手伝いしますよ!
A様:頼もしいですね。DIYアドバイスも引き続きよろしくお願いします!
Cue:はい。気兼ねなくご相談ください。本日はインタビューにお付き合いいただきありがとうございました!
インタビュアー/写真撮影:高崎亮太
マンションA様邸
物件:中古マンション購入+リノベーション
所在:東京都杉並区高円寺北
築年数:1995年
構造:RC造7階建
占有面積:73.21㎡
リノベーション完了:2017年8月
物件購入費:約5,000万円
総工事費:197万円